FXだけに限った話しではなく「投資全般」に関わることですが、エントリーしてポジションを持った後に、必ず行うことは『決済』ですよね?
その「決済」という部分を掘り下げてみると、最終的には『利益確定』と『損切り』のどちらか一方を必ず選択することになります。
※厳密にいえば「同値撤退」もありますが今回は省かせていただきます。
実際にトレードしている人であれば、この「利益確定」と「損切り」が同じ“決済”という枠組みであるにもかかわらず、“精神的な負担は違ってくる”ことを理解しているかと思いますが、これは分かっていても中々思うように実行出来ないと思います。
では、どちらの場合も同じ「決済する」というボタンにもかかわらず、なぜこのようにして心理障壁が生じるのでしょうか。
今回はその秘密に迫りたいと思います。
FX初心者は『プロスペクト理論』を理解すべき
投資の世界では「損小利大トレード」が理想とされていますが、その邪魔をするのがまさに『プロスペクト理論』となります。
プロスペクト理論とは、簡単に説明すると「利益と損失がたとえ同じ金額だとしても人間は『損失』の方が苦痛を感じやすく、利益は早く確定したがる」ということです。
つまり、人間の本能でトレードしている限り『損大利小』になっているので、本能を制御することが勝ち続けるトレーダーの第一歩となるわけです。
ちなみに、この理論は「ダニエル・カーネマン」と「エイモス・ドベルスキー」が提唱して、2002年にノーベル経済学賞を受賞した理論になります。
今ではトレーダーの中では知らない人はいないくらい有名な理論であり、私も負け続けているときにこの理論を知って、「だから損失が増えるんだぁ~」と感心したのを覚えています。
そして、FXで利益を上げていく為にも「損小利大トレード」が不可欠な存在になってきますが、それを実現するためにも『プロスペクト理論』を理解し、実践的に自己制御できる術を身につけなければなりません。
では、例題を見ていきながらプロスペクト理論をみていきたいと思います。
プロスペクト理論:利益
突然ですがあなたはこの2つのうちどちらを選択しますか?
◆質問
- 90%の確率で100万円獲得できるが、10%の確率で0円になる
- 10%の確率で400万円獲得できるが、90%の確率で0円になる
直感的に好きな選択肢を選んで構いませんが、このような条件を提示した場合、恐らくほとんどの人は①を選択するでしょう。
このことからも人間は「利益を早めに確定したがる」という心理に陥りやすく、いつの間にか「利小トレード」になっているのです。
プロスペクト理論:損失
では、あなたが借金200万円を抱えているとした場合はどうでしょうか?
◆質問
- 100%の確率で100万円獲得できる
- 70%の確率で全額免除できるが、30%の確率で借金が400万円になる
このような状況にいる場合、多くの人は②を選択する傾向にあります。
これもプロスペクト理論になりますが、私たち人間は本能的に「利益を得られる局面ではギャンブルはせず、損失を被るときはギャンブルをする」という傾向があるのです。
しかし、トレードに置き換えて考えても、「利益が出たらすぐに確定して損切りはしない」という損大利小トレードを続けていれば資金が無くなるのも時間の問題になります。
事実、このトレードによって昔の私も『ロスカット』を繰り返しましたから…(泣)
プロスペクト理論に負けない為の方法
私たちは本能的に『損大利小トレード』を行っていることが分かりました。
では、どのようにすれば「損大利小トレード」から『損小利大トレード』へと変わることができるのでしょう。
損大利小トレードの克服方法:デモトレードで練習
損大利小トレードをしている人は、言い換えてしまえば「利益を伸ばさないのに損失は伸ばす」ということです。
昔の私も全くこれと同じトレードをしていましたが、こうして考えると“利益を上げることが難しい”ことを理解できるかと思います。
まさに『コツコツドカーン』とはこのことを指しますね。
そこで改善策ですが、このトレードをしている場合は「利益を伸ばす」と「損切り確定」の2つを改善する必要があります。
文字通りの作業になりますが、ここで注意しなければいけないのは、
- リアルトレードを一旦離れること
- 損切りから改善する
ということです。
リアルトレードを離れる理由は「損失を抑える」ということにあります。
これまでリアルトレードで「損小利大トレード」を克服することが出来なかったからこそ、ここまで損失が膨らんでいるのであり、今まで出来なかったことをリアルトレードで改善しようと思ってもそれは難しいでしょう。
ですので、ロスカットをくらって再起不能になる前にリアルトレードから撤退することをおすすめします。
次に「損切りから改善する」ということですが、活動の場所をデモトレードへと移してまずは『損切り』の練習からするようにして下さい。
これは、「利益を出す」ことよりも「損失を抑える」ということが資金を守る上で大切であり、FXでは損失が小さければ何度でもチャレンジすることが可能だからです。
それに、一度に「利益を伸ばす」ことと「損切り」を習得しようとする場合はエネルギー分散してしまうから、まずは『損切り』から習得するべきなのです。
損切りができるようになってから『利益を伸ばす』という練習をしていけばいい話ですからね。
トレーダーとしての人生を左右する『プロスペクト理論』
このように『プロスペクト理論』を理解していなければ、必然的に「損大利小トレード」をすることになります。
しかし、「相場で生き残る」「利益を上げ続ける」ためには損大利少トレードではなく『損小利大トレード』へと導く必要があるのです。
これが出来なければ『勝ち続けるトレーダー』になるのは難しく、そして『相場で生き残る』こともまた難しくなってしまいます。
ロスカットや含み損を経験した人なら分かるかもしれませんが、多くの人が相場から『退場』する理由としては、“人間の本能”が影響しているわけです。
しかし、人間には“本能”と同時に“理性”が存在するので、損大利小トレードを克服することも可能となります。
ですので、理性的なトレードを行えるように、時間を掛けてデモトレードで練習を積み重ねましょう。
この期間は利益を上げることができませんが、けっしてそれは「損失」ではなく、むしろ「利益」かもしれません。
どちらかといえば、本能を抑えることが出来ない状態でトレードを続けることの方が「リスク」になるので、ここでも“理性”を保ち、「ポジションを持ちたい」という気持ちを抑えてデモトレードに励んでみてください。
その行動が必ずあなたの“財産”へとなるのです。