FXで実際に運用していくにあたって迷うのが「海外口座」か「国内口座」です。
FX初心者であれば、
「海外口座は信用できない…」
「英語が分からないから国内口座」
「海外口座だとちょっと心配」
という“不安”が先行してしまうので『国内口座』を開設する割合が多いと思います。
ただ、その中でも「海外口座の魅力」について取引前から理解している人は、FX初心者だとしても海外口座を開設する場合があります。
ですので、多くの場合はFXの経験年数が上がってきた段階で「国内口座」から「海外口座」へシフトすることが多いのです。
では、実際にFXで運用を考えた場合は「海外口座」と「国内口座」のどちらがいいのでしょうか?
FX初心者が迷う「海外口座」と「国内口座」の違い
FXで「海外口座」を使っていると“上級者”のイメージを持ちませんか?(笑)
昔の私は「海外口座=専業トレーダー」もしくは「海外口座=プロトレーダー」という印象があったので、「海外口座」と聞くだけで“異次元”のような印象を抱いていました(笑)
それに、「海外」と聞くと、なんだか心配な気持ちになっていたのです…。
だから海外口座を開設することに躊躇していましたが、いざ自分が海外口座で取引開始すると、自分の思っていたものとは違うことに気付いたのです。
何事も経験してみないと分からないことがあるのを痛感しました(汗)
では、一つずつ「海外口座」と「国内口座」の違いを見ていきましょう。
海外口座と国内口座の違い①:注文方法
FXの海外口座と国内口座で大きく異なるのが「注文方法」になります。
ただ、「注文方法」といっても、私たちの注文方法(Bid/Ask)が変わるのではなく、あくまで“業者の発注形態”が違ってくる、という意味です。
主に海外口座は「NDD方式」を採用しており、国内口座は「OTC方式」を採用しています。
では、その違いを詳しく見てみましょう。
注文方法:NDD方式
NDDとは「No Dealing Desk」の略で『投資家との間に人やディーラーを仲介しないオーダー方式』のことを指します。
つまり、「投資家が注文したすべてインターバンクへ直接オーダーしている」ということです。
NDD方式の場合は投資家からの注文を直接インターバンクへ流している為、『利益相反ではない』といえるのですが、「じゃあFX業者はどこで儲けているの?」と疑問に思うかもしれません。
その“答え”は「スプレッド(手数料)」になります。
ですので、“投資家が儲かって取引をすればするほどFX業者が儲かる”ということなのです!
NDD方式を選択している業者は国内では数少ないので、多くの人は海外口座を作ってトレードをしたりします。
「透明性」という意味でもOTC方式よりもNDD方式が高いので、トレーダーの中では“常識”になりつつあるのです。
注文方法:OTC方式
OTCとは「Over The Counter」の略で『投資家との間にディーラーが存在し、相殺できない分をディーラーへ注文するオーダー方式』のことを指します。
つまり、『FX業者が投資家の注文を反対売買している』ということです。
この方式は別名「DD方式」とも呼ばれており、「呑み業者」なんて呼ばれることもあります。
OTC方式の場合は、『投資家と反対売買』をしているので、投資家が儲かればFX業者は損失になります。反対に、投資家が損失を出せばFX業者は儲かる仕組みになっているのです。
ですので、OTC方式を採用しているFX業者は投資家と『利益相反関係』になるのです!
例えば、あなたが友達と競馬場へ行ったとしましょう。
そこで、友達へ馬券購入を手間賃1,000円で買いに行ってもらったとします。
しかし、その友達は実際には馬券を購入せずに、あなたのお金と手間賃を“一時的”にポケットに閉まったとしましょう。
仮にあなたの馬券が当たったら友達は「損失」になり、あなたの馬券が外れたら友達は「馬券代+手間賃」が利益になります。
この時、あなたと友達は『利害相反関係』になるのです。
これは極端なたとえ話になりますが、OTC方式はこのような考え方になるから、“透明性”という部分においても疑問が残るといわれています。
それに、国内口座がここまで「スプレッド(手数料)」を安くできるのは他にキャッシュポイントがあるから出来ることなのです。
海外口座と国内口座の違い②:スプレッド
海外口座と国内口座では「スプレッド(手数料)」も変わってきます。
これは、収益形態に目を向けてみると分かり易いですが、海外のFX業者はNDD方式を採用しているため、主な収益源が「スプレッド(手数料)」になります。
反対に国内のFX業者はOTC方式を採用しており、トレーダーの“損失”が主な収益源になっているので「スプレッド(手数料)」を安くすることが出来るのです。
その結果、海外口座と国内口座ではスプレッドに“差”が生じているのです。
海外口座と国内口座の違い③:レバレッジ
FXで資金運用するにあたって“最大のメリット”とも呼ばれるのが「レバレッジ」の存在です。
レバレッジとは、「てこの原理」のようなイメージになりますが、手元にある資金の何倍ものお金を動かすことが出来る仕組みになります。
例えば、資金10万円しか持っていない場合は当然その金額しか取引することが出来ませんが「レバレッジ10倍掛けると100万円の取引ができる」という仕組みです。
そのため、『少ない資金で大きな利益を生み出せる』ということがレバレッジの特徴であり、FX最大のメリットになります。
レバレッジを高くすると損失額も増える可能性があります。
しかし、国内業者は規制によりレバレッジが25倍(2018年5月時点)に制限されているので、レバレッジを効かせて利益を狙いたい人は海外口座を利用している場合が多いです。
(金融庁によると、国内業者のレバレッジ規制を25倍から10倍に変更することも議論されています)
こうした規制が海外のFX業者には無いので、「200倍~888倍」というレバレッジを提供しているFX業者が多く、そのレバレッジに魅力を感じている人は海外口座を利用して高レバレッジで資金を運用しているのです。
海外口座と国内口座の違い④:ロスカット水準
レバレッジが高ければその分、「証拠金維持率が減少する速度も加速してしまう可能性」があるので、海外口座はその点を考慮してロスカット水準を低く設定しています。
しかし、海外口座でも業者によって「ロスカット水準」が違ってくるので注意が必要です。
ロスカット水準が高いとどうしても強制決済されてしまうリスクがあるので、ロスカット水準が低い業者を選ぶことによって「含み損」を抱えたとしても強制決済されないでしょう。
ちなみに、海外口座のロスカット水準が『20%』が多いのに対して、国内口座のロスカット水準は『50%~100%』と高い水準になります。
これは「お金を守る」という意味では国内口座の方が優位に働きますが、「含み損を抱える」という意味では海外口座に分配が上がります。
いずれの場合もトレード方法によってメリットにもなり、デメリットにもなるので、こうした部分を意識してFX業者を選定するのもいいかもしれません。
海外口座と国内口座の違い⑤:追証(ゼロカットシステム)
この『ゼロカットシステム』は海外口座を選択する“最大のメリット”といっても過言ではありません。
その前にまずは「追証」について説明していきますが、これは簡単に説明すると『証拠金残高がマイナスになった時の追加証拠金』のことを指します。
最近では「スイスフランショック」が記憶に新しいですが、FXでトレードしていると要人発言や経済指標の影響によって一瞬で値が大きく動くケースが多々ありますが、このように“一瞬で値が飛ぶ”場合はロスカットが間に合いません。
ロスカットが間に合わないと自分の資金以上の損失を抱えてしまう可能性が高く、そうなってしまえば「口座残高」がマイナスになってしまいます。
では、この『マイナス分』を誰が払うのか?
海外口座…FX業者
国内口座…投資家(お客様)
実はこのように違ってきます。
※すべての口座が上記の限りではないので詳細は各業者にお問い合わせください
海外口座を利用するメリットとして、大きな価格変動が起きた際にたとえ「口座残高」がマイナスになったとしても、その『マイナス分』はFX業者が負担してくれる場合が多いです。
しかし、国内口座の場合は投資家がそのマイナス分を負担しなければいけません。
先ほどの「スイスフランショック」を例にとってみると、この時はスイス中銀の発言によって『20分で約4000pips』の変動があったのです・・・。
勿論、国内口座でトレードしている人は“借金”や“破産”した人もたくさんおり、社会的問題になりました。
私の知り合いの投資家もこの出来事によって「数千万円」という金額を溶かしてしまったそうです…。(幸いにも私の場合は利益を取ることができました)
では海外口座を利用している人はどうでしょう。
この時に個人投資家を救ったのが紛れもなく『追証なし(ゼロカットシステム)』です。
つまり、口座残高がマイナスだったとしても“支払い義務なし”という有難いシステムですね。
国内口座であれば“借金”や“破産”していた可能性があっても、それが海外口座であれば追証なし・・・。
これは本当に凄いですね!
でも、実際に海外のFX業者はゼロカットシステムを採用していた為に『倒産』してしまったケースもあるのです。
事実、スイスフランショックが起きた際、「アルパリUK」というFX業者は投資家の追証を肩代わりすることが出来なくて倒産してしまいました。
ただ、アルパリUKは倒産してしまいましたが、「信託保全義務」が適用されていたので、投資家の資金は守られたのです。
今回はスイスフランショックを例にしましたが、他にもリーマンショック、東日本大震災、ギリシャショック、チャイナショック、ブレグジット…と様々な影響によって値が飛び、ロスカットを経験した人がいます。
その時、『追証』か『ゼロカットシステム』のどちらかで対応が全然違ってくるのですね。
国内口座=追加証拠金が必要
海外口座=追加証拠金が不要
というケースがほとんどです。
※国内口座でもゼロカットシステムを採用している企業があるので詳細は各FX業者へ確認してください。
海外口座と国内口座の違い⑥:ボーナスキャンペーン
FX業者によっても違ってきますが、海外口座を開設するとボーナスキャンペーンが貰える場合が多いです。
主に、
- 新規口座開設ボーナス(未入金ボーナス)
- 入金ボーナス
この2つになりますが、まず新規で口座開設をするとボーナスが付与されますが、これを「未入金ボーナス」とも呼びます。
そして次に実際に取引をする為の『入金』をすることで「入金ボーナス」も貰うことができるのです。
口座開設から入金を済ませることで運用資金が増えるのですね!
この入金ボーナスは「入金額」を基準として、規定の金額を入金するとその金額の何%かをボーナスとして付与される仕組みになります。
例えば、「100%入金ボーナス」としたとき、「資金100万円を入金した場合は運用資金が200万円になる」ということです。
ただし、「お金を貰える」というわけではないので、出金する際はボーナス分を差し引いた金額でしか出金できないので気を付けてください。
反対に国内口座の場合は、『キャッシュバック』という形で口座開設を促しています。
しかし、実際にキャッシュバックが貰える条件として「〇〇円以上の入金」、「○○通貨の取引」など、いくつか条件が設けられている場合があり、FX業者によっても違いが生じるので、キャッシュバック目的で口座開設するのであれば各業者に確認してみましょう。
海外口座と国内口座の違い⑦:信託保全
FXでトレードをしていく上で、高額な資金運用を考えている場合は「信託保全」を意識しなければなりません。
「信託保全」とは私たち投資家の大切な運用資金を守る制度のことになりますが、FX業者は“財産”と“投資家の資金”を別管理して、万が一「倒産」してしまった際に投資家へ資金返済する仕組みを持つようにしています。
ただ、「信託保全」にもいくつか種類があります。
◆信託保全の種類
- 完全信託保全…投資家のお金を完全に金融機関(銀行)の信託口座へ預けて分別管理
- 分別保管…金融機関(銀行)の信託口座を使用せずに自社内で分別管理
- 一部信託保全…投資家のお金の一部を金融機関の信託口座へ預けて分別管理
一口に「信託保全」といってもこのように違いが生じます。
その為、高額な資金を運用する際はFX業者がどの信託保全に該当するのかチェックする必要があるでしょう。
国内のメジャーなFX業者は「完全信託保全」になっていますが、海外口座は法的義務が無いのでその限りではありません。
しかし、法的義務が無いからといっても分別管理はされており、最大2万ユーロ(約220万円)~完全信託保全とFX業者によって違いこそありますが、以前と比べると危険性は低くなっていると言えるでしょう。
もし海外口座をメインに利用する場合は、信託保全を確認して上手く口座を使い分けてリスク管理するようにして下さい。
海外口座と国内口座の違い⑧:取引プラットホーム
一部の業者こそ違いますが、基本的に海外のFX業者が使用するプラットホームは「MT4」になります。
これは世界最先端技術を導入しており、世界的に見ても投資家が共通して使用するプラットホームになります。
反対に国内のFX業者は自社開発したプラットホームを投資家へ提供しています。
国内FX業者が海外共通のプラットホームである「MT4」を採用せずに、わざわざ多額の資金を投じて自社のプラットホームを開発するのは、レート操作やストップ狩り…などの噂があります。
ただ、確証はなくあくまで“噂レベル”になるので参考程度にしてください。
あまりにも海外口座や他の国内口座とレートが違うと『信頼問題』になるので、そこまで大胆な行動を取る必要性は感じませんが…。
しかし、「火のない所に煙は立たぬ」という言葉が存在する以上、何かしらその秘密が隠されているのかもしれませんね。
これはFX業者の「利益形態」から類推している人が多いのでこのような“噂”が立っているのでしょう。
海外口座と国内口座の違い⑨:税金
FXで資金を運用していく中で絶対に忘れてはいけない存在が『税金』になります。
しかし、実は「海外口座」と「国内口座」では税金区分が違うのを知っていましたか?
「知らなかった…」では済まされない税金についての知識をトレード前に習得しておくことをオススメします!
海外口座:総合課税(雑所得)
海外口座の場合は総合課税(雑所得)になります。
これは簡単に言ってしまえば「稼いだ金額によって税金が変わる」ということです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超~ | 45% | 4,796,000円 |
この表を見ると分かりますが、海外口座を利用する場合は『330万円』が一つの節目になることが分かります。
国内口座の場合はどんなに稼いでも『税金が一律20.315%(申告分離課税)』になるので、海外口座を利用する場合は330万円を超えて稼ぐ場合は税金が高くなり、逆に330万円以下の場合は税金が安くなるのです!
従って、海外口座で利益が出そうであれば、国内口座へ移動して税金を安くするのも一つの方法になります。
ただ、海外口座には気を付けなければいけない点があります。
それは『損失繰越』と『損益通算』です!
『損失繰越』とは、FXで出た損失を3年間に限り繰り越すことができる制度になります。
例えば、
- 2017年:50万円の損失
- 2018年:100万円の損失
- 2019年:150万円の利益
この場合は、
- 2017年:確定申告義務なし
- 2018年:確定申告義務なし
- 2019年:確定申告(課税10%)
となります。
しかし、これが「国内口座」の場合だと・・・
- 2017年:確定申告(損失繰越)
- 2018年:確定申告(損失繰越)
- 2019年:確定申告(課税なし)
※3年間の利益合計が0円になるので課税が発生しません
それに対して『損益通算』とは、「FX以外のオプション取引や先物取引の損益をFXの損益とまとめることができる」という制度になります。
しかし、海外口座の場合は、他の海外FX口座との損益通算しかできません。
仮に、「海外口座は損失だけど国内口座は利益が出ている」というケースでも損益通算することは出来ず、それぞれを申告しなければいけないのです。
国内口座の場合はオプション取引や先物取引といった市場デリバディブ取引を損益通算することが出来るので税制面では優遇されるでしょう。
このように考えると海外口座は国内口座よりも税制面で劣る部分があるといえますが、海外口座の場合は年間利益が330万円以下ならば国内口座よりも税金が安いので、メリットがないわけではありません。
ですので、「所得」と「利益額」を考慮して上手く口座を使い分けてみてください。
FXで取引するなら「海外口座」と「国内口座」どちらがオススメ?
結論から言ってしまえば、“その人の考え方次第”となります。
これまで海外口座と国内口座の違いを説明してきましたが、要約すると、
海外口座のメリット
- 透明性・約定率が高い→NDD方式採用
- レバレッジ→200倍~888倍で取引可能
- ゼロカットシステム→追証なし
- 最先端のプラットホーム→MT4
海外口座のデメリット
- 入出金の管理 →海外送金
- 税率面→利益額が大きければ課税額も大きくなる
- サポート体制→すべてが日本語で完結ではない(日本人スタッフ対応)
- スプレッド→国内口座よりも大きい
海外口座にはこうしたメリット・デメリットがありますが、これらはトレードしていく中でそこまで大きな問題にはならないかと思います。
では、どんな人に海外口座をオススメするのか?
海外口座がオススメな人
- 少額取引でレバレッジを活かしたい
- ハイレバレッジで大きく利益を上げたい
- 本格的なトレードをしたい
このような人には海外口座を開設することがオススメとなります!
ただ、「海外口座」と「国内口座」はどちらの場合もメリット・デメリットはありますので、『どちらを選択することがよりストレスが少ないか?』という部分を重視するようにして下さい。
無理に海外口座を開設する必要もありませんが、海外口座もそこまで敷居が高くなく、デメリットも少ないので本格的にトレードを始めたいならば海外口座を視野に入れた方がいいと思います。
昔の私も「海外」と聞くだけで、
日本語が通じるかな…?
倒産したらどうしよう…
資金を持って逃げられるのでは?
税金の仕組みが分からない…
と思っていました。
しかし、いざ海外口座を開設してトレードしてみると自分が想像していた以上に使いやすく、簡単だったのを覚えています。
それにFX業者の「透明性」という部分においても海外口座は国内口座よりも優れているので、選択肢として考えてもいいかもしれません。
ただ、すべてにメリットがあるわけではなく、そこにはデメリットも存在するので海外口座と国内口座を比較した上で「メイン口座」を決めていくことをオススメします。